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映画『RUN』感想 | 代理性ミュンヒハウゼン症候群?怖すぎる母の予想外な秘密と主人公の闘い!【ネタバレ】

RUN ラン

(C)2020 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

 

母…怖すぎるでしょ…

 

 

こんにちは、チョコプリンです。 

 

今回レビューする『RUN ラン』は、代理性ミュンヒハウゼン症候群という疾患を題材にしたサイコスリラーです。

母の恐ろしさと娘の奮闘が印象に残る今作、感想と気になった点をまとめていきますね〜。

 

◆鑑賞のきっかけ◆

以前から、代理性ミュンヒハウゼン症候群というキーワードに関心があったから。

作品情報

娘を溺愛する母親の愛情が狂気へと変貌するサイコスリラー。生まれながらの病気で車椅子生活を余儀なくされている娘と、彼女に病的な愛情を注ぐ母親の危うい関係を描く。『search/サーチ』などのアニーシュ・チャガンティが監督・脚本、同作でも組んだセヴ・オハニアンが製作・脚本を担当。母親に疑念を抱く娘をオーディションで選出されたキーラ・アレン、娘への愛を暴走させていく母親をドラマシリーズ「アメリカン・ホラー・ストーリー」などのサラ・ポールソンが演じる。 シネマトゥデイ

 

データ

原題 : Run 製作年 : 2020 映倫区分 : G

製作国 : アメリカ 上映時間 : 90分 映画.com

 

あらすじ

生まれつきの病気で車椅子生活を送る17歳のクロエ(キーラ・アレン)は、大学への進学を望んでおり、自立しようと頑張っていた。そんな中、自身の体調や食事を細やかに気遣い、進学の夢を後押しする母親ダイアン(サラ・ポールソン)が差し出す薬が危険なものであることを知り、彼女は母に不信感を抱く。クロエは過剰なまでに自分を管理するダイアンから逃れようとするが、その先には想像を絶する試練と、思いも寄らぬ事実が待ち受けていた。 シネマトゥデイ

 

登場人物(キャスト)

◇ダイアン・シャーマン(サラ・ポールソン)…母

 

◇クロエ・シャーマン(キーラ・アレン)…娘

 

感想

Search/サーチ』の監督だったんですね〜!ブログを書くために調べて知りました。どうりで面白く感じるわけだ。

 

 

なぜ母が恐ろしく感じるのか

代理性ミュンヒハウゼン症候群の新手パターン

まず、「代理性ミュンヒハウゼン症候群とは、

子どもに病気を作り、かいがいしく面倒をみることにより自らの心の安定をはかる、子どもの虐待における特殊型です。加害者は母親が多く、医師がその子どもに様々な検査や治療が必要であると誤診するような、巧妙な虚偽や症状を捏造します。
加害者は自分が満足できる結果がでて、処置をしてもらえるまで「その」状態を続けるため、必要のない検査が延々と続くことになります。加害者が医療者の注意を十分に引きつけることができないと、子どもの症状がどんどん重篤になり、致死的な手段もいとわなくなることがあるので、十分注意が必要です。しかし、医療者が疑いを持つと、急に来院しなくなったり、別の医療機関を受診したり、これまでに学習した知識を基に、さらに巧妙な症状をつくりだすこともあります。一般的に加害者は、医師に熱心な母親である、という印象を与えます。「この母親が虐待などするはずがない」と、思わせることがまれではないため、何か「おかしい」と MSBP を疑うことが大切です。 日本小児科学会

という虐待の一種で、劇中の母親ダイアンの言動はこれに該当するかと思います。彼女は常に娘の体調と食事に気を遣っていて、一見熱心でよく出来た母親像です。しかしその裏、娘に怪しげな薬を飲ませて外界から遮断して支配している、そういう行動がまさに特徴として当てはまりますよね。

 

ただ、ダイアンの言動は一般的にこの精神疾患でイメージするものとは違う点もあって、

例えば、

・人付き合いがなさそう

・そこまで同情を誘おうとはしてない

・人当たりがすごい良いとかでもない

というところが代理性ミュンヒハウゼン症候群の典型に当てはまっていないように感じました。

 

周囲や世間から評価されたいわけでもなさそうで、本当の目的が分からずもやもや。

この真意の掴めない母の言動佇まいが怖すぎる…!

(娘がPCを見ているときに引きで映る母……)

 

それでいて、食事の管理や教育は必要以上に行き届いているのが、最大の矛盾という感じで本当に“狂気の愛”です。

 

なので、よく聞く代理性ミュンヒハウゼン症候群と思ったら新手パターンというのが、物語に怖さと不穏感を与えています。

 

予想外の秘密

物語の冒頭では早産の場面が描かれ、途中で一瞬だけ母の過去が映し出される情報や示唆はありますが、そこからは読めそうで読みにくい真実になっています。

だからこそ、真相が明らかになったときの予想外さがすごい。

 

同時に、これまでのダイアンの言動一つ一つの意図が理解できて、彼女の必要としているものも分かります。

ダイアンが長い年月をかけて、目的のために手段を選ばず作り上げてきた家族の形が想像できて、より怖さを感じますね。

 

あとは、2人の演技の上手さにも注目です!

特にサラ・ポールソンの愛情と狂気が入り混じった表情が素晴らしいです。

 

サスペンスと応援したくなる主人公

主人公が母のいる家から逃走を試みるんですが、何度も逃れられない緊張感と絶望感、それに抗おうとする彼女の賢く粘り強いところが良かったです。何といっても「はんだごて」ですからね。笑

 

母の恐ろしさと主人公の頭の回転の早さの応酬によって、いい感じのテンポが生まれてサスペンスとして楽しめますし、こちらもイライラすることなく応援しながら鑑賞できました。

 

また、主人公を演じるキーラ・アレンが、実生活でも車椅子ユーザーなので、“車椅子”という属性を物語のために消費する構造にないのも好印象です。

 

賛否あるラストの意味とは?(ネタバレ有)

ただ、終盤は盛り込みすぎでラストも納得いかなかったです。

 

流れとしては、

ダイアン早産で子供を多機能不全?で亡くす→失意の中、新生児を誘拐し犯罪者となる→クロエの健康な体に不必要な薬を摂取させる(犬の薬とか!)

 

というもので、その目的は、亡くなった実子の再現とクロエを逃がさないためだと考えられます。ずっとそばにいてほしくても血の繋がりがない…から縛り付けるしかありません。

普通に考えたらこんな方法はとらないだろうけど、ダイアンが過去に酷い虐待(背中の傷から推測)を受けていたことがトリガーの一つにはなっているのかなーと思いました。

 

ここまでで割と盛りだくさんなんですが、ラストにクロエが例の“緑の薬”を取り出す場面があります。これは母から娘への虐待の連鎖を表現してますよね。

それが復讐であれ歪んだ愛情であれ、結局逃れられてないし後味悪い…もう自傷行為に近いです。

 

象徴的なシーンとはいえ、薬を飲ませるのは非現実的で、悲しすぎるし盛り込みすぎでした。どれだけ繰り返すねんと。本当の両親とのシーンがあれば良かった。

 

負の感情が受け継がれるとしても、幸せな家庭なのに嘘ついて刑務所の病院に通ったり、ふと狂気が滲むようなパターンか(影響下にはある)、

逆に正当防衛で撃つラストの方がしっくりきた気がします。(連鎖を断ち切る)

要は、もうちょっと控えめな方が怖さが引き立ったのに、そこが少し残念でした。

 

まとめ

『RUN』は実話を参考に作られているみたいです。

こういった事件や題材を知らないで鑑賞すると、突拍子もない毒母スリラーに感じそうですが、実際に現実社会でも起きているということが、物語の信憑性とリアリティを高めていますね。

 

『search』と共通しているのは、家族でも知らない一面があるというところでした。

 

 

満足度

★3.5 /5点満点中

 

 

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