マイ・ブロークン・マリコ
(C)2022映画「マイ・ブロークン・マリコ」製作委員会
マリコ、中々シリアスでハードな人生だなぁ。
こんにちは、チョコプリンです。
今回レビューする『マイ・ブロークン・マリコ』は、永野芽郁と奈緒の熱演が話題のシスターフッド作品です。
予告の遺骨を奪ってベランダから飛び出すシーン(とジャケット写真)が、衝撃的ですよね。
すぐにチケットを取りました。
作品情報
文化庁メディア芸術祭マンガ部門で新人賞に輝いた平庫ワカのコミックを映画化。長年にわたり父親から虐待されていた親友の死を知った女性が、遺族から遺骨を奪って旅に出る。『四十九日のレシピ』などのタナダユキがメガホンを取り、同監督作『ふがいない僕は空を見た』などの向井康介が共同で脚本を担当。主人公を『そして、バトンは渡された』などの永野芽郁、亡き親友を『君は永遠にそいつらより若い』などの奈緒が演じるほか、窪田正孝、尾美としのり、吉田羊らが共演する。 シネマトゥデイ
◆原作漫画
落ち着いたらこちらの原作漫画も必ず読みたいと思います。絵柄がタイプ。
データ
製作年 : 2022 映倫区分 : G
製作国 : 日本 上映時間 : 85分 映画.com
あらすじ
気の晴れない日々を送るOL・シイノトモヨ(永野芽郁)は、親友・イカガワマリコ(奈緒)が亡くなったことをテレビのニュースで知る。マリコは子供のころから実の父親(尾美としのり)にひどい虐待を受けており、そんな親友の魂を救いたいと、シイノはマリコの遺骨を奪うことを決断。マリコの実家を訪ね、遺骨を奪い逃走したシイノは、親友との思い出を胸に旅に出る。 シネマトゥデイ
登場人物(キャスト)
◇シイノトモヨ(永野芽郁)…主人公。やさぐれた性格だが根は優しい。
◇イカガワマリコ(奈緒)…シイノの前から突然いなくなったダチ。幼少から実の父親に虐待を受けて育つ。
感想
女性同士の重い感情を扱った原作漫画。読もう読もうと思いながら読めていなかったので、原作未読のまま鑑賞。
比較することもなく逆に真っさらな状態で良かったのかもしれません。
ハードボイルドで心震える余韻を期待していたんですが、違った印象もありましたので、
良い点・悪い点をまとめていきたいと思います。
あたしには正直、あんたしかいなかった
第一印象は、
父親がクソ!!!!!!あまりにもクソ。
“突然亡くなったダチの遺骨と共に海へと向かう旅”ということなので、すでにマリコが亡くなった状態からスタートするわけですけども、
予想していたよりもシリアスでハードなマリコの人生に心が引きずられます…。主な原因はマリコの父親で、彼女は幼少期から父親に虐待を受けて育っています。
それがあまりにも酷いし、ボロアパート内に響く怒号と暴れる音、顔や腕には傷やあざがあるとなると、どこかで助けられなかったのかという思いがずっと頭の中に残っていて…小中高と周りの目は一体どうなってるんだ!と。(近隣住民・教師・保護者・児童相談所等々)
まあ現実世界でも見て見ぬふりや通報しても親元に返されるというニュースが溢れてますし、難しいんでしょうね。
主人公のシイノも小学生・中学生?くらいから煙草をふかしていて家庭環境が良くないであろうことが窺えます。
そんな2人だからこそ、互いが相手しか頼る人がいない・依存してしまう、“共依存”に近い関係性になってしまったんですね。
ここで考える共依存はDVにおけるものとは少し違う、2人だけの世界という印象を受けました。お互い必要としていて安心感や愛情、執着心に不安感ごちゃまぜの感情を持っている。
設定上シイノ目線のマリコ中心なのは仕方ないんですが、主人公側の生い立ちもワンカットあれば、
“あたしには正直、あんたしかいなかった”理由が理解しやすかったかもしれません。
魂の叫びを届けてください(ネタバレ有)
序盤から気になったのは、都合が良い部分が目立つことです。
遺骨奪取する時にはとんでもないルートで逃げてましたし、そもそもあの遺骨感丸出しの白い箱を持ちながら旅するのも現実的ではないですよね。物語に水を差すようですが…。
度々登場するマキオも物語における役割は分かりますけど、もう少しうっすらでも良かったかな~と思います。
そういったところをカバーしていたのが、主演2人の演技です!
何よりも突き抜けていました。
特に奈緒の虚ろで黒目が広がるような危うい存在感が凄すぎて…。まさに虐待サバイバーの言動でした。
永野芽郁に関しては、原作イメージ差をカバーする健闘で、マリコをどう支えて良いか分からなくなるシイノと言う人物を全力で表現していました。
その魂の叫びについていけない構成・演出が本当に勿体なかったですね。
なんだろう、行間をはぶいてるような、シーン同士の繋ぎがないというか。ラストもスパンって急に終わります。
終盤に入って、主人公は勤めているブラック会社に退職届を提出するも断られ、なんだかんだで日常を過ごすように。
マキオの言葉通り、もういない人に会うには生きていくしかないから、彼女のやり方でマリコを想っていました。そんなある日、マリコの実父の後妻から手紙が届きます。
それを読んで笑顔になるシィちゃんの図で物語は締めくくられます。
手紙が昔の手紙なのか遺書なのか、読んでも読まなくてもいいけど、シイノのもうワンアクションが欲しかったなと思いました。
遺骨だけじゃない、目を奪われるシーンの数々
原作が一巻とコンパクトながらヒットした作品だからか、劇中でも印象的なシーンが多かったです。
遺骨を奪う場面がやっぱり目を引きますが、
他にも、高校時代にリストカットで脅迫するところは危うさと依存度の高さが、
カフェでパンケーキ頼んでシイノを呼び出すシーンは、マリコの壊れ具合(=それを形成した周りの酷さ)が一番分かります。
私のお気に入りは、
屋上で線香花火しながら将来飼う猫の名前を考えるところです。名前がポイント。
まとめ
漫画で色々確かめたいし、比較したいですね。腑に落ちない部分を解消するためにも。
今作で良かったのは、女と女の愛と執着をスクリーンで観られたという点です。
キャストのインタビューか何かでも、一言で表せない関係や感情と言っていましたし、形象しがたい関係性がスクリーン上でよく出ていました。
結局亡くなった理由は誰にも分からないけれど、自分が逝けばシィちゃんがいなくなることはないからかなと思ったり。不安から解放されるってことなのかもしれません。
私はマリコ側で見てしまったので、
過去の耐えがたいトラウマからくる言動だからこそ、安易にメンヘラで括ってはいけないと考えさせられました。Twitterやブログでマリコをメンヘラで片付ける人を見たんですが(もちろん周りにいれば面倒で大変です)、
自戒の意味も込めて、他者に対して想像力を働かせるべきだなと。その方がもっともっと優しい世界ですよね。
そんな世界になっていってほしいです。そしたら救われる命もあるかもしれません。
≪一言≫
永野芽郁ちゃん演じるシィちゃんの、
ご飯をかきこんで食べる姿が格好良かったです。
満足度
3.5 /5点満点中